米野井筋水路変更工事に関する資料-まとめ

庄内用水米野井筋の水路変更工事に関する資料を文字に起こしたものです。まだ精査できていないので、正式な書類や案がごちゃまぜ、それから日時も順番にはなっていないと思います。この内容を元に後日ガイド「米野井筋」の該当項目を修正していくつもりです。解説というか簡単な説明は一番下に書きましたので、たくさんスクロールしてやってください。

 

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文中のカタカナ及び難読漢字は適宜ひらがな・常用漢字に置き換え、必要に応じて句読点を追加、□は判読若しくは入力不能文字

 

名古屋市市政資料館 蔵

臨時工事設計書大正6年度 内

大正6年度臨時工事設計書 庄内用水普通水利組合事務所 内

大正5年度 庄内用水路米野井筋水路変更工事件綴 庄内用水普通水利組合事務所

 

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大正6年3月14日 事務員 柴田徳太郎

庄内用水路米野井筋水路変更工事施行に付、許可申請所案伺

 

水路変更工事施行に付、許可申請

庄内用水普通水利組合管理

愛知郡愛知町大字米野字塩田字頓ヶ島および大字露橋字西海道地内

 

一、水路変更工事

区長 247間4分

右は在来水路最低地に存立し用水灌漑上毎に不便を感じ侍り候に付ては、今回本組合費を以て別紙図面の通り変更水路掘鑿し□は□□会□議□に有□□は工事施行の件□許可□□る関係書類を□□□申請□□

大正6年3月14日 管理名名

 

知事宛

□□本甲時は関係町村の請求により施行□□に付用水灌漑□何等□□し次第□名申□□や

 

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大正6年3月6日 事務員 柴田徳太郎

 

庄内用水路米野井筋水路変更工事、愛知町長より町受施行□□□申請により本組合に施□は変更なきものと認め許可せんとするにより左按にて□□□伺

 

愛知郡愛知町長高田善之助

大正6年3月5日附申請、庄内用水米野井筋水路変更工事町受施行の件許可す

但、本工事は対象6年3月10日迄に着手し、□月31日□の施工□べし

年月日 管理郡名

左記

一、金3522円93銭

 内訳

 金49円80束 土木費

 金1319円9束 工護岸費

 金2154円4束 用地費

 

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愛知郡愛知町長 高田善之助

大正6年3月5日附申請、庄内用水路米野井筋変更工事町受施工の件許可す

但、大正6年3月10日迄に工事着手□年3月31日限り竣功すべし

大正6年3月6日

庄内用水普通水利組合管理

愛知郡長 保々隆矣

 

左記

一、金3522円93銭

 内訳

 金49円80束 土木費

 金1319円9束 工護岸費

 金2154円4束 用地費

 

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工事受員申請

庄内用水路米野井筋当町地内

一、水路変更工事

右工事町受施行命せられ矦様致度此段申請矦也

大正6年3月5日 愛知町長 高田善之助

 

庄内用水普通水利組合管理

愛知郡長 保々隆矣殿

 

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寄附金申請

今回当町大字米野地内米野地内米野井筋位置変更の件申請矦、付ては該工事費として左記金額寄附致度矦古御採納相成度町会議決議の上此段申請矦也

 

追て本□金額し義は工事御実施に際し工費額に異動を生じたる場合はその増減に隋ひ即実費額を寄附一の致矦、また本工事竣成の上自然公用を廃するに至りたる旧水路敷地は弁償を以て当町へ譲与相成度此段添申矦也

大正6年2月15日

愛知郡愛知町長 高田善之助

 

庄内用水普通水利組合管理

愛知郡長 保々隆矣殿

 

一、金3672円93銭 水路変更工事費

 

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貴組合持管理に係る米野井筋中当町大字米野字塩田字頓ヶ島および大字露橋字西海道に跨る水路は低地に存在する為め毎年用水灌漑の都度不尠不便を感じ居り候義付、別紙設計書類通り水路変更相成度、尤も右に要する用地及工費等は本町より寄附□致□□工事中板柵の部分は他日永久的の工事施行候、□当町費を以て維持□致候義当町会決議済□至急御実査の上水路変更相成度此段及御照会候也

大正6年2月10日

愛知郡愛知町長 高田善之助

 

庄内用水普通水利組合管理者

愛知郡長 保々隆矣殿

 

追□

本文工事御実施に□□設計金額に異動を生じ候場合は御指定により増減納付□致然して公用を廃し候旧水路敷は以無償本町へ譲渡相成度此段申添候也

 

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工事設計書

 

愛知郡愛知町大字米野地内米野井筋

一、水路変更工事 延長247間4分

 此工費金 3672円93銭也

 右入用 土工費 49円800

     □□□費 1319円090

     用地費 2154円040

     監督費 150円

     合計  3672円930

 

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工事設計書

 

米野井筋

一、水路変更工事 延長247間4分 幅員1間

 此工費金 49円80銭也

右入用

自0間至247間

 切取 立坪45 単価1 計金45

    別紙図面□計算□の通り

 盛土 立坪19,1

    別紙図面□計算□の通り、切取土使用に付無代

 残土 立坪29,9

    指定の修□に捨土のこと

柵作 

 人夫 員数9人7 単価50銭 計金4円80銭

    盛土行う□人の□□

合計  計金49円80銭

 

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米野井筋土坪計算表

 

省略

 

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工事設計書

 

一、護岸工事 延長258間

   右側258間 石垣

   左側10間 石垣、248間 板柵

 此工費金 1319円9銭也

 

内訳 省略

 

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工事設計書

 

一、用地買上□□ 356坪4勺

 此工費金2154円4銭也

右入用

 宅地 8坪90 単価8円 計金71円20銭

 畑  4坪72 単価10円 計金28円32銭

 田 342坪42 単価10円 計金2054円52銭

 計 356坪04 計金2154円4銭

 

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各種図面

平面図
平面図
水路敷縦断面図
水路敷縦断面図
水路縦断面図
水路縦断面図
水路横断面図(左)
水路横断面図(左)
水路横断面図(右)
水路横断面図(右)

求積図
求積図

 

 

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工事受負契約書

一金3522円92銭

 

此受負事項

愛知郡愛知町地内庄内用水路米野井筋水路変更工事

 

但別紙仕様書並に図面の通り材料共一色

右町受工事愛知郡愛知町長高田善之助に前記の金額を以て受負はしめたるに付、庄内用水普通水利組合管理愛知郡長保々隆矣を甲とし愛知郡愛知町長高田善之助を乙として契約する条件左の如し

 

第1条

乙は大正6年3月10日本件工事に着手し大正6年3月31日に限り竣工すべし

 

第2条

工事施行方法は渾て別紙仕様書並に図面に依ると雖も些少の部分にして仕様書並に図面に明記せざるものは勿論その他実施上に於ては監督吏員の指揮を受け処弁するものとす

 

 

1ページ飛ばしてた!!後日追加

 

 

第12条

甲の都合を以て此契約を解せんとする時は工事の既済部分並に現場に運入したる材料に対する金額工料人夫賃その他雑費等にして確証あるものに対する金額は仕様書価格により算出し又仕様書の価格に依り難きものは甲は一応乙の意見を聞き相当の額を定め乙に払渡しその工事の既済部分並に材料は甲の所有とす

 

第13条

甲に於て工事模様替または中止を命するか若しくは天災その他避くべからさる事項の為め乙に於て第1条期限内に工事落成せさる場合に於てはその理由を詳記し甲に延期を請求することを得甲に於て前項の請求を受け正当の理由あると認むるときは相当の延期を与ふることあるべし

 

第14条

工事竣工検査の際検査員に於てその出来形仕様書に違ひたる廉を発見したるときは事の大小を論せす何回にても乙にその手直を為しむるとのとす

但しこれに要する費用は一切乙の負担たるべし

工事竣功後検査を為す能はさる部分は施行の際係員の検査を受くべし

若検査を経す竣功せしときはその部分を取払はしめ検査の上乙の費用を以て再び施行せしむることあるべし

前二項に於て甲の指揮する日限内にこれを竣功せしめさるときは甲に於て直ちに執行しこれに要する費用は乙の受負代金より引去るものとす

 

第15条

工事中は乙に於て現場の取締を為し工事及び材料品等受負事業全体の損害は総て乙の責たるへし故に第4条により甲乙工事全部授受を了せさる以前に於て如何なる事故ありて損失を生することあるも一切乙の負担たるへし且つ工事の為め近傍の地所を踏荒しその他他人の身体財産等に対して生せしめたる損害の要価は一切乙の負担たるべし

 

右の通り契約しその証書2通を作り甲乙各1通を保管するものなり

 

契約担当者

庄内用水普通水利組合管理 愛知郡長 保々隆矣

 

大正6年3月8日 愛知町長 高田善之助

 

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庄地第3号を以て水路浚渫工事受負施行希望の有無に関し□照会□趣了□□町内米野井筋浚渫工事受負希望に□□□□□取計□□□□□及□□□□也

大正6年5月10日

愛知町長 高田善之助

 

庄内用水普通水利組合 事務所御中

 

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町受工事竣工報告

庄内用水米野井筋の内水路変更工事町受を以て施行候□竣工候に付此段及報告候也

大正6年4月30日 愛知町長高田善之助

 

庄内用水普通水利組合管理

愛知郡長 保々隆矣殿

 

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町受工事竣工報告

愛知町大字米野及大字露橋地内 庄内用水路米野井筋

 

一、水路変更工事

 着手 大正6年3月10日

 竣工 大正6年4月30日

 

右町受を以て施工□□前記の通り竣工□□に付□□及報告□也

大正6年4月30日 愛知町長 高田善之助

 

庄内用水普通水利組合管理 愛知郡長 保々隆矣殿

 

(添付メモ)

先に差出□竣工□先□□請求書は誤□の廉あるに付本書と□引□□□□

 

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大正6年5月1日 事務員 柴田徳太郎

 

米野井筋水路変更工事竣功延長に付、工事竣功届左案の通提出□□伺

 

工事竣功届

愛知郡愛知町地内庄内用水米野井筋水路変更工事

 

右工事大正6年4月18日附土□第3994号を以て御許可□年□□□大正6年4月30日迄に工事竣功致し候に付□□御届申□□也

 

年月日 管理名名

 

知事宛

 

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大正6年4月□6日(注:16か26) 事務員 柴田徳太郎

 

本年3月14日附を以て米野井筋水路変更の□申請□置□本□□許可□□□付、工事着手届□出に□□□□伺

 

工事着手届

愛知郡愛知町地内庄内用水米野井筋水路変更工事、大正6年4月16日より着手致し候に付□□□届申□□也

 

大正6年4月16日

管理名名

 

知事宛

 

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庄内用水普通水利組合

 

大正6年3月14日附庄天第9号申請水路変更工事施行の件許可す

但工事に着手せんとするときは其日付を届出て指揮を受け本年6月20日迄に竣功し其旨届出検査を受りへし

 

大正6年4月18日

愛知県知事 法学博士 松井茂

 

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本年2月10日御照会

 

当町大字米野大字露橋地内に跨る米野井筋水路変更工事中護岸工事の一部別紙設計書の通り変更致し度、尤も工事費には異動無の候に付、御承認相成度此段及御照会候也

 

大正6年3月27日

愛知町長 高田善之助

 

庄内用水普通水利組合管理

愛知郡長 保々隆矣殿

 

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工事設計書

一、護岸工事 延長358間

 右側 358間 人造石垣

 左側 10間 人造石垣、248間 板柵

此工費金 1319円9銭也

 

内訳省略

 

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工事設計書

庄内用水路米野井筋

一、水路変更工事 延長247間4分 幅員1間

 

此工費金

土工費

護岸費

 

(注:書きかけ?)

 

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工事設計書

米野井筋

一、水路変更工事 延長247間4分

 此工費金

内訳

自0間至247間

 切取 立坪45 単価1 計金45

    別紙図面□計算□の通り

 盛土 立坪19,1

    別紙図面□計算□の通り、切取土使用に付無代

 残土 立坪29,9

    指定の修□に捨土のこと

柵作 

 人夫 員数9人7 単価50銭 計金4円80銭

    盛土行う□人の□□

合計

 

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工事設計書

一、護岸工事 延長258間

   左側 258間 石垣

   右側 10間 石垣、248間 板柵

 

内訳省略

 

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今回当町大字米野大字露橋地内道路改修工事施行の結果、貴組合御管理に係る米野井筋当町大字露橋字西海道地内に於て別冊設計書の通り当町費を以て橋梁架設の義、当町会決議済に付、御承認相成度此段及御照会候也

大正6年3月27日

愛知町長 高田善之助

 

庄内用水普通水利組合管理

愛知郡長 保々隆矣殿

 

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工事設計書

 

愛知町大字米野字頓ヶ島地内米野井筋

一、人造石立切新工事 附木造杁移転工事 1ヶ所

 此工費金 39円27銭也

 

右入用

根掘 土砂 長6尺5 幅8尺5 厚1尺5 立坪0,4

      単価 1円 計金40銭

      埋戻立り

根木 生松丸太 長4尺 幅0尺3 本数16

        単価10銭 計金1円60銭

明木 生松丸太 長5尺2 幅0尺3 本数4

        単価12銭 計金48銭

 

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以上。米野井筋が豊成団地の北側を迂回して流れていたのは、てっきり豊田紡績の工場が出来たときに付け替えられたのかと思っていたら、実は工場とは全く関係ないところで「在来水路最低地に存立し用水灌漑上毎に不便を感じ」ていた為に付け替えられていた、ということが分かった。

 

通常用水路は田に水を送るという役割から、周辺の土地よりも少し高い位置を流れていることが多い。庄内用水でも庄内川の古い堤防跡を使用していたり、自然堤防に沿って流れていたりする。工事で付け替えられた米野井筋の下流部が、なぜに「最低地に存立」していたかを考えると、おそらくその流路が鎌倉街道に沿っていることに原因があったのではないか。付け替え前の直線的な米野井筋の流路は鎌倉街道、ひいては古代東海道の道筋に沿った(あるいは跡を使用して掘られた)ものであり、いわば地形を無視したものだった。

 

井筋の最下流部ということもあり、笈瀬川に注ぐ悪水路(排水路)としての役割もあるいは担っていたのではないかと考えられ、その場合は周りより低い位置を流れていても何ら問題はない。すぐ南を流れていた悪水路の徳左川の開鑿は宝暦年間(1751~64)であり、米野井筋を含む庄内用水が開鑿された元亀・天正年間(1570~92)からは200年程を経過した後のことであるから、排水の役割を米野井筋の下流部が担っていたとしてもおかしくないのである。

 

周辺の地形を見てみると米野井筋のすぐ北に字頓ヶ島という微高地が存在している。これは明治の旧版地図でも確認でき、水田はなく文字通り島のような高まりであったと想像できる。大正6年の米野井筋水路変更工事で誕生した新たな流路はこの頓ヶ島を経由するものであり、地形を最大限に活用した付け替えだったと言える。

 

そして後に、米野井筋が付け替えられた位置にすぽっとはまるように豊田紡績の工場が完成した。具体的な時期は分からないものの、大正12年の旧版地図では既に存在していることから、工事からわずか数年での出来事だったということだろう。

 

現在米野井筋の流路の跡のほとんどは私有地に取り込まれたような形になっているものの、下流側の一部区間においては路地になっていて辿ることが出来る。付け替え工事の際に描かれた図面と全く変わらない曲線が、今もそこにある。

 


 

資料に書かれた内容をひとまず転記した。いろいろ解読し、今後分かりやすい形に変えた上で、ガイド「米野井筋」の内容を更新していこうと思っている。